先日、アイヌ民族の祈りの祭典『アイノモシリ一万年祭』へと行ってきました。
毎年、夏のお盆前後1週間にわたって開催されて、今年で第34回目になるそうです。
僕の生まれてすぐに始まったこの祭典、長年続いてきたんですね〜👏👏
いったいどんなお祭りなのか、今回はその様子をレポートしたいと思います。
*アイヌモシリとはアイヌ語で、「アイヌの国」という意味。
現在、アイヌモシリ改め→アイノモシリへと改名されています。
昔より日本人(和人/大和民族)はアイヌ人のことを「蝦夷(えみし)」「土人(土着人の意味)」と呼び、日本人と混血したアイヌのことを「アイノ」(日本語の「アイノコ」の略語)と呼んでいました。
現在アイノモシリと改名したのは、これはアイヌ人だけのものではなく、今の時代は日本人もアイヌ人も一緒であり共存共生しているという意味をこめて改名されました。
目次
過酷!?サバイバル!?超自然派フェスティバル!
アイノモシリ一万年祭、この祭典は北海道の大自然のなかで開かれる!
川が側を流れ、森が目の前に広がります。
まず最初に伝えておきたいのは、これはかなり過酷なイベントであるということ!
綺麗なトイレがあり、シャワールームがあり、炊事場があり、お湯が出たり、
家やドームなどが建ち、寒さや雨を凌げる場所があったり、お金を払えば良い環境にいれたり、
また物がなんでも買えたり、心を満たす商品がいろいろと取り揃えられていたり…..、
そんなものは全くありません!
ここではキャンプや泥、土臭さなど、原点、自然のそのままがあります。
汗をかいたら川で水浴びし、食べた食器も川で洗い、洗濯もしたければ川でします。
洗剤も自然100%のものか、炭で洗います。(水浴びは女性専用時間あり)
雨が降れば自分で工夫して過ごさなくてはならないし、寒さで体を冷やさないようにしなければなりません。
会場中心部に焚かれるキャンプファイアーはその分身も心も温めてくれます。
そこには人々が集い、夜遅くまで歌や笑い声が響き渡ります。
普通のフェスだったら、恐らくたくさんの会社や企業の物販、資本などが絡んで、また設備や快適性が保たれているだろうけれど、ここではそんな物はなく、すべて自分次第です。
食事も自分で考えなくてはなりません。(簡易食堂はあり)
ここでは適応力とサバイバル能力がとても求められます。
街中からポンと来た人にとっては、なかなかシビアな経験になるかもしれません。
でもその分ここには非日常と、普通には出会えない人達、新しい人生観(!?)などに出遭えると思います。
アイノモシリ一万年祭!!
会場に着くと『イランカラプテ』と迎えてくれる!(*ようこその意)
駐車場には多くの車が並び、日本全国津々浦々からのナンバーが目に留まる。
東北、関東、関西、四国、中国、九州!
無いのは沖縄だけか。(でも沖縄人はいた!)
車で寝たり、テントを張ったり、好きなようにできる。
会場奥へと進んでいくと、坂を降りてメインの広場へとたどり着く。
ブルーシートが張られ、手作り感が強い。
ステージも出店している小屋も手作り。
廃材をもらってきて作ったよう。
文化祭のような雰囲気さえ漂う^^
上記したけれど、大掛かりな装置や、お金、資本、企業スポンサーなどで回っているわけではなく、一個人による運営で設営され、そこに有志が集まってきているのがアイノモシリ一万年祭だ。
会場全体はそんなに広くはない。
参加者は多くても400人か、500人ほどだろうか。
34回分の過去はわからないけれど、ここ数年はきっとそれくらいの規模で推移している様子だ。
様々な出店が並ぶ
アイノモシリは入場料が2000円。
もし出店したければプラス2000円かかるが、誰でもなんでも出店できる!
たこ焼きを売っている人がいたり、書を書いている人がいたり、
手作り石鹸やお菓子や服なども売っている!
マッサージをして小銭を稼いでいる子供たちもいる!
ここではオーガニックや自然派のものが並び、基本全てがハンドメイド品だ!
ここには様々な人が集まってきていて、一般的に生活していれば出逢うことのないような人たちと出逢えた。
インドでゲストハウスを経営していた人、書を書いて全国行脚している人、環境保護を訴えて紙芝居している人、シンガーソングライターにファイアーパフォーマー、ひたすらわっしょいと唱えている人、個性的な人がたくさんいた!
そしてアイノモシリの良いところの一つに、子供達を野放しにできることだろう。
子供たちは、裸足で駆け回り、泥だらけになって、川で泳ぐ!
みんなが同じ村の住人であり、みんなで子供を見守る。
何か忘れてしまっていたものがここには存在するのだった。
犬や猫を連れてきている人たち、今回はなんと馬を連れてきている人もいた!
これには子供たちもテンションMAX!!
ちなみに自分もだった😆
オープンライブステージ!
アイノモシリでは毎晩ステージが開かれて、誰でも何かを発表できる!
大体は音楽をやる人が多いが、踊りをしたり、紙芝居をしたり、一芸を披露する人も少なくない。
プロでもアマでも、素人でも玄人でも誰でも表現したいという熱意さえあればできるのだ!🔥
この日は僕もハンドパンを演奏させてもらった😊♪
こちらニセコを拠点とするファイアーパフォーマンスグループ『鼓炎』のステージ!
幻想的でダイナミックな炎のパフォーマンスにみんなうっとり❣️
イベント盛りだくさん!運動会に子供も大人も大はしゃぎ
アイノモシリでは昼間、毎日のように何かの企画が行われる。
この日は、楽器を手作りして発表するというものだった。
そして一番盛り上がるのはこれ、運動会!!
子供の部と大人の部があり、大人の部は、本気で遊ぶ大人たちが印象的だ😆!
またワークショップなども開かれる。
この日はジャグリング・ポイをみんなで回した。
アイノモシリとは祈りの祭典である
そしてこのアイノモシリの一番の重要な催し、それが「祈り」だ。
これらは通称「カムイノミ」と呼ばれる。(*「神に祈る」という意)
このアイノモシリを開催するアイヌのシャーマン、アシリレラさんを筆頭に執り行われるのだった。
これこそがアイノモシリ一万年祭を行う目的であり、これこそがメインにして最重要の催しとなる。
この日は女性の祈りの日。女性参加者みなで祈りを捧げる。
近年、このアイノモシリをただのフェスと勘違いして来る人が多くて困っているそう。
屋外でやるし、ライブステージがあるし、キャンプファイアーもあれば楽しいフェスやレイブなどと思ってしまうかもしれない。
しかしそういった人たちによって会場は荒らされ、危険ドラッグをやり、酒を飲んで騒ぎを起こされてしまう。
それが地域住民の目に止まり、警察沙汰になって、この祈りの祭典をネガティブで危険なものへと風評被害に繋がり閉鎖に追い込まれていってしまう。
実際に、このイベントの趣向をよく理解していない地域住民や警察との間で何度も揉め事が起きてしまっている。
しかしこれは決してただの楽しみを求めるためのお祭りではないし、若者だけでなく数多くの年配の方も参加しているし、そしてその多くが純粋な祈りのために参加している。
北海道であったアイヌ民族への虐殺
アイノモシリ一万年祭、このイベントのやる意義と目的は「祈り」その為にある。
北海道にはもともと先住民族であるアイヌ人が住んでいた。
そこに日本人である和人がやってきて、虐殺や強制移住、強制労働などがあったのだ。
アイノモシリ一万年祭は、その魂の鎮魂のためのものなのだ。
もちろん一概に和人(日本人)だけが悪いとは思わないし、時の権力者と繋がっていたアイヌ人もいる。
そもそも人間である以上アイヌ人だって同じことを歴史の中で他にもしてきているはずだ。
けれど誰が良い、誰が悪いではなく、この地で悲しい歴史があったのは事実のこと。
今の僕らの世代はそれを繰り返さないで学び、その悲しいエネルギーを纏ったその土地と魂に対して、慰霊のため祈りを捧げることではないだろうか?
それがシャーマンとして生まれたアシリレラさんの使命であり、僕ら参加者一人一人の務めでもあると思うから。
それを分かった上でのフェスであり、お祭りであり、参加すべきだと思う。
それは逆の立場で考えたら至極当然のことだと思う。
アシリレラとは
アシリレラさんは世界的にも有名なシャーマンであり、高齢の今でも祈りのために日本全国を飛び回っている。
こちらはアシリレラさんの出演するドキュメンタリー映画。
アシリレラ・フリースクール
また孤児を積極的に受け入れている彼女。今までに多くの子供達を育ててきた側面がある。
多くの人から慕われ、彼女の絶大な力と信頼によってアイノモシリ一万年祭も開かれている。
アイヌ文化・民謡
こちらでは、アイヌ人たちによる、民謡や踊りが披露された。
土着信仰、自然を崇拝し、動物たちを崇め、祈り全てのものに霊が宿ると考えている彼らの人生観、宗教観。
それは日本人の神道にも通づるアニミズム(自然崇拝)だと思う。
<参考文献>
アイノモシリ一万年祭へのアクセス
北海道の片田舎で行われるここへ辿り着くには車が必須です。
もしくはヒッチハイクで!(^^b
北海道の空の玄関口、新千歳空港からそこまで離れてはいません。
アクセス方法ですが、近年ではGoogle Mapにも掲載されていて、『アイヌモシリ一万年祭』で出てきます。(ここはまだ旧名で検索を!)
近くまで行くと、期間中は手作りの看板が随所に出ていますよ!
まとめ
埼玉県出身で、一般的な日本人教育のもとで育った自分。
アイヌ人については、中学校の時に社会科の授業で習った記憶がある。でもほとんどその歴史や、何があったのかなんて触れられてこなかった。
それは沖縄についても同じ。
日本の中で差別や搾取、圧政、虐殺があったということは僕らはほとんど知らない気がする。
勉強する内容といえば、戦国武将の名前だったり、合戦が起きた年代だったり…。
でもそんなの覚えて何になるの?って今でも思っている。
それは興味ある人が覚えれば良い。
それよりも同じ日本となっているが、その中にあるたくさんの他の文化や価値観を学ぶ方が大切だと思うし、それこそが争いのない社会を創り上げる一歩となるだろう。ましてこれからの時代に必要なことのように思える。
アイノモシリ一万年祭。なかなかハードなフェスではあるけれど、これをお読みの皆さんも機会あらば是非一度訪れてみてほしい。
今まで見えなかった新しい一面の日本社会が見えて来るだろうから。
日本を愛する者としてそれを知るのも必要な作業だと思うから。
アイヌ人の魂、北海道の地に眠る魂が、安らかになるように祈りを込めてこのブログ記事を執筆させてもらう。
僕個人、和人として精一杯の感謝と祈りの思いを込めて。