過去最大規模と言われた塩田千春の個展世界へと行ってきた。
東京・六本木ヒルズの森ミュージアムにて、およそ4ヶ月に渡って開かれていた大規模個展。
その『魂がふるえる』と題された展示には、文字通り見る人の感性に強く訴えかけるものがあった。
彼女の25年間の歩みの集大成でもあった今回の個展。その内容を振り返ってみます。
目次
塩田千春とは
ベルリン在住の現代美術家。大阪府出身。
生と死という人間の根源的な問題を中心に、「生きることとは」、「存在とは」を探求し、その場所やものに宿る記憶を糸で紡ぐ。
大規模なインスタレーション(空間装飾)や、写真、映像、立体作品など様々な手法を用いた作品を制作する。
彼女の最大のテーマは「不在のなかの存在」である。
2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2015年には、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表作家として選出される。
世界各地での個展、国際展にも多数参加、その数は300本以上に及ぶ。
作品と世界観
入場してすぐに迎えてくれるのが彼女の代表作ともなっている、赤い糸を紡いで製作された《不確かな旅》だ。
《内と外》
《集積ー目的地を求めて》
《外在化する身体》
《静けさの中で》
黒い糸と焼け焦げたピアノ。彼女が実際に体験した幼少期の頃の火事から生まれた作品との事。
多くの椅子はかつての観客と栄光を、ピアノから出る黒い糸はかつての美しい音色を。それ全体が宙で絡まりあい、まさに「不在の中の存在」を意識させられる作品でもあった。
今後の予定個展
この後もいくつか個展開催が予定されている。
グローバルに活躍する彼女は、世界のどこかで常に個展をやっている、日本での個展やイベントは彼女のWebサイトを確認しよう。
まとめ
彼女の中にある一端の闇を見た気がした。
「不安」「孤独」「恐怖」「自己抑制」、また「愛」「夢」「記憶」「人との繋がり」など、形のないもの、不安定なもの、愛慕うもの。
しかしそれは、作品を創る大きな理由であり、それがあってこそここまでの世界観を表現できたのだと思う。
しかしここに見えているのは、彼女の照らされ評価された一面だけで、その裏には多くの苦悩と探索があったのだろうと思う。
また彼女は現在も癌を患っていて、まさに死と対峙した中から表現される世界は、緊迫したリアリティーさえも感じさせた。
まさに本当の芸術とは狂気と紙一重と感じるところも多かった。
しかしそれこそが、人々の心を打つ深い芸術作品へとなり得るのだろうか。