ガーナに滞在して面白いように時間が流れていった。
日々様々な事が起こり、同じ日というものは存在しなかった。
当初の滞在目的であった、サッカーアフリカンカップの開催まで間も無くとなった。
しかし、その「オープニングセレモニーでパフォーマンスをする」という事であったが、一向にその詳細を詰めるような話は無かった。
僕たちは、もしかすると?と思った。
しかし、もはや出る出ないに関わらずこの3週間、寝る間も食べる間も惜しんで練習してきて、自分の中心はジャグリングとなっていた。
一つの事にここまで熱中して続けた事は人生で初めてであり、そこから様々な発見や学びもあったので十分だった。
そしてその後、結論から言うと、オープニングセレモニーは結局話がうまく通らずに、僕らのパフォーマンスはなかった。
フィンや、キャプテンガーナも出れず、僕らは『まぁ、アフリカだからそんなもんだよね!』と言って、笑って終わったのだった。
→ケープコースト・物語りの始まりの地!
しかし、代わりにボクが得たもの、その大きさに驚いたのだった。
コクロビテの秘密のビーチ
僕らは車を手にしてからというもの、なかなか公共交通では行きにくい所へも簡単に行けるようになった。
その一つが、コクロビテ(Kokrobite)だった。
ここは、首都のアクラにほど近い場所にあるビーチリゾートで、幹線道路から道を外れ、未舗装路を30分くらい走った先にある秘境的なビーチリゾートだった。
一応ガイドブックには載っているみたいだが、簡単には来れず、知る人ぞ知る場所だった。
(コクロビテビーチ→https://bigmilly.com/)
僕らはある週末の日、フィンがここに行こうと誘ってきてくれた。
広い敷地内にはコテージが並び、目の前には海が広がる。
素晴らしいロケーションに雰囲気も抜群の場所だった。
南国の情緒溢れる素敵な場所だった。
敷地内にはバーやハンモック、ブランコ、休憩スペースなどがある。
ここで見た衝撃的な物は、このトラック達だった。
彼らは、ヨーロッパ(特にオランダから。オランダ人は大の冒険好き!)から、このトラックに乗ってやってきたのだった。
いわば秘境を行くツアー旅行者達だ。
20人ほどが乗っていて、テントを積み、食料を積み、スペインから船でモロッコへと渡り、そこから南アフリカを目指しているのだった。
運営会社があり、この地を何度も往復しているベテランのドライバーが皆を乗せて旅をしていた。
もちろんツアーと言っても通常のものとは違い、かなりの冒険だし、危険も付き纏うだろう。
スコップやら、非常用のガソリンやら、何本ものスペアタイアやら、ぬかるみにはまった時用の足場までちゃんとあり、ドライバーはメカニックの資格も持っていた。
これは凄い…!!
これぞオーバランダー!!しかし規模が違う!
人生初のパフォーマンス。緊張とその先にあるもの
そしてここでは毎週末にLiveミュージックとパフォーマーによるショーが行われていた。
フィンが話を通してくれ、僕らはここでパフォーマンスをする事になった。
オアシスよりも雰囲気がよく、規模も大きい。周りに民家はないので音楽も大きな音で流すことができる。
その夜、ここには多くの客が集まり、地元の人達から先ほどのツアー客、また欧米人のバックパッカーや旅行客、NGO関係やビジネスで来ている人らもいた。
また集まったパフォーマーも多かった。彼らは皆アクロバットだ。
ゆうきとボクでやる事を分ける。
ゆうきは様々な種類のジャグリングにバルーンアート、ファイアーも出来たが、ボクが今できる事はジャグリングのボール3つと、バルーンアートで犬を作れるくらいだ。
なので、その二つがボクのやる演目となった。
この3週間の特訓のおかげで技術力は上達したとはいえ、まだまだ上手いなんて呼べるものではなくみすぼらしかった。
しかしもうそういった事は考えない事にした。今、自分にできる事を一生懸命にやるだけだった。
そしてジェンネ以来、ボクはここで初めて、まともなショーというものを経験することとなった。
ボクの出番は全体の中で、数分だけだが、それでもその緊張といったらなかった。
始まる前は、口から心臓が飛び出そうなほどドキドキしたし、胃も痛いし食欲もなく、怖く、ずっと憂鬱だった。
この頃、ようやく口でバルーンを膨らませることに慣れてきた頃だった。
バルーンを口で膨らませるのはすごく難しく、3週間かかった。
しかしショーの最中、緊張から手元、口元が震えて膨らまなかったらどうしよう。また割れたらどうしよう。
などとマイナスな事を考え出したらキリがなかった。
僕は元来とても人見知りだったし、恥ずかしがり屋だった。
人前に出る勇気はなかったし、自分がどう見られているかも自信がなかった。
そしてそれを、このアフリカの旅の中でさんざん再認識させられ悔しい思いをたくさんしてきた。
しかし分かってはいても、具体的にどうしていいのか分からずに苦しかった。
僕は変わりたかった。パフォーマーになる志望ではなかったが、今、自分を変えることのできる物はこれだった。
自分の苦手に挑戦すること。恐怖に打ち克つこと。
それは逃げないこと、諦めないこと、言い訳をしないことでもある。
そして僕は知った。
恐怖に打ち克って物事を成し遂げた時、その達成感と充実感と言ったらなかった。
魂が輝きに満ち溢れ、自然と笑顔になり、怖いものは何もなくなる。そして心の奥底からのエネルギーに満ち溢れるのだった。
何だ、この力は!?
しかし僕はこの感覚こそが、今の自分に必要なものだと悟った。
そうか、これはきっと『自信』だ!
こんな子供も一緒にパフォーマンスをする。
しかし手馴れたもので、本番前でもこの余裕の笑顔^^
彼は家庭の経済的理由によりパフォーマンスをしていた。
子供だが一人前だ。そして人によってやる理由は様々なのだなと知った。
パフォーマンスは毎週末行われたのだった。