【イタリアとの出合い1】〜初めてのヨーロッパ〜

イタリアとの出合い

旅立ってからまもなく1年が経った頃だった。

僕はアジアを抜けるとヨーロッパへと入った。

時は2006年、季節はまもなく冬になろうとしていた。

 

旅する事にもだいぶ慣れ、好奇心旺盛な僕は、新しい街に着いてする事といえばその街を徹底的に歩き通す事だった。

しかし観光地や、またグルメなどに興味があるわけでもなかった。

ただひたすら歩いてその街の地形や、どんな建物があるのかを見ていた。綺麗な風景の場所はすごく感動したし、また街のスラム街や治安の悪いと言われている場所に行くことにも躊躇がなかった。むしろ、そんな所を見付けると、自ら積極的に乗り込んでいったりしていた。

何がしたいわけでもないが、とりあえず見ておきたかった。将来の事なんてまだこれっぽっちも分からないが、しかしそういった社会の闇や底部を見る事はとても大事だと思っていた。またそこに心惹かれる自分もいた。なんでも見てやろう、と。

しかし悪運が強いとはこの事だろうか?(笑)

それでも危険な目には未だ遭った事がないのだから。

ロンドン・パリ、憧れの初ヨーロッパ旅行!

僕はこの旅で初めて飛行機を使った。

ちょうどこの時、ヨーロッパで流行りだしていたいわゆるLCC、格安飛行機だ。

ヨーロッパの主要都市間を千円〜三千円くらいで飛んでいる。
スペシャルオファーというのをやると、2ユーロという破格で販売していた。
僕はこれに乗ってみたくなり、ちょうどインドで出会った友達と再会する為もあって、ロンドンへと行く為に乗ってみたのだった。

初のLCCに乗った感想は、

座席間が狭く、シートのリクライニングもなく、またそのシートもプラスティックであり、なかなか窮屈な思いをした。

まぁ、こんなものかな、とその時は思った。それでも飛行機に数千円で乗れたのには感動したが!

(今は競合社も多く、サービスは向上している。)

ロンドンで無事に友達と会うと、高速列車ユーロスターを使い共にパリへと向かった。
そこで数日間滞在し、かの有名なエッフェル塔などを見て周った。


そして友達と別れると、フランスのTGVと呼ばれる高速列車にも乗ってイタリアへと向かったのだった。

これも一度乗ってみたかった。

感想は、シートがデカい割りにリクライニングなどがなく、重厚な感じなのだが、きめ細やかさがない。日本の新幹線の方が設備や快適性、サービス共にどちらよりも上である、と思ったのだった。

驚異のユーロ高!ヨーロッパ周遊とその代償…

そういう訳で僕は、パリからミラノを経由し、フィレンツェ、ローマとあっという間に南下して来ることができた。

ヨーロッパ縦断図

ヨーロッパは美しいと思った。

アジアとは別世界であり、華々しさや歴史を感じる建物が多く目を奪われる事が多かった。

街灯一つとってもオシャレで、オレンジ色が古い町並みによく合い、独特の情緒を醸し出していた。

 

パリ、セーヌ川沿い

パリ、セーヌ川沿い

そんな中、旅人である僕はある事に悩まされていた。

それは、物価の高さだった。

ヨーロッパが目的で、お金もある程度用意していて、それを使う目的で旅行に来ている訳ではなく、僕はただ旅の中でここに立ち寄ったというだけだった。

泊まるところといえばやっぱり大部屋で大勢で寝泊まりするドミトリーと呼ばれる形式の安宿だし、それらはユースホテルとか、ホステルやゲストハウスという名でも呼ばれていた。

アジアでは、一番安いのはインドだった。一泊100円とかで泊まれた。
食事も安く、一日500円あれば、3食プラスおやつなんかも食べれた。

しかしヨーロッパはそうはいかない。都市にもよるが一泊安くても20〜30ユーロはする。

イギリスの通貨はポンドだが、そこでもやはり20ポンドは最低した。

問題は、その為替の値動きだ。2006年、この時ユーロもポンドも異様に高かった。

1ユーロで160円〜170円。
ポンドに至っては1ポンド250円もした。

これは、20ユーロで3200円以上、
20ポンドでは5000円にもなった。

そこに食費が入る訳だが、かなり切り詰めないと厳しい訳である。

(それ以降は下がり続け、現在は1ユーロ120円前後、1ポンド140円程だ。)

僕はアジアでかなり節約していて、貯金を少し使っても大丈夫だと思っていた。

そうして調子に乗ってユーロスターやTGVなども使って移動していたのだが、この後すぐ、その考えが甘かったのだと思い知らされることとなる。

残高不足!?真冬のローマでの決断

初めてのヨーロッパはTVで見た世界をそのまま再現していて、あらゆる場所に感銘を覚えた。

僕は今回ここに来て良かったなと思った、少なくともこの時までは。

その後、イタリアのローマにまでやって来た。予定ではさらに南下して、港町から出るフェリーに乗ってギリシャへと渡り、物価の高いヨーロッパはもう抜けアフリカへと行こうと思っていた。

そんな矢先の出来事だった。

僕はいつものようにATMに行き、手持ちの国際キャッシュカードから現金を引き出そうとした。

しかしエラーが出てしまいお金が降ろせない…!?

んん…!?

なぜだ…??

何度やっても同じだ。

 

僕はその謎を解明するために、ATMの項目にある「Balance」の英語表記ボタンを選択した。

これは残高照会だ。

すると「7ユーロ」と表記されている。

僕は一瞬目を丸くした!

そしてすぐさま近くのネットカフェへと行った。

そして、ウェブ上から自分の口座にアクセスして入出金明細を確かめて見る。

すると…、確かに1000円程しか残されていない。

これが僕の全財産だった…。

 

特に悪用されたとかいう訳ではなく、自分の収支のバランスが悪かっただけだったのだ…。

アジアの感覚でお金を使いすぎてしまったようだ。

やってしまった…。

僕は少しの間頭がボーとした。

季節は12月上旬、本格的な冬はもう目の前まで迫ってきていたのだった。

【イタリアとの出合い2へと続く】