昨今の世の中を騒がしている中東のシリア。
常に紛争の渦中であり、600万人以上に及ぶ難民は記憶に新しい。
ここは本来ならば美しい文明の行き交う地であり、古来より栄えてきた人類にとっても重要な場所だ。
しかし今、そこには破壊されたばかりの建物や街がニュース越しに映し出されるばかりだ…。
美しきシリア
僕が初めてこの地を訪れたのはまだ平和だった2007年のこと。
ここは古代より文明や宗教の混じり合う要所であった。
社会科の授業でも必ず聞くであろうその名前、「メソポタミア文明」と「エジプト文明」の入り混じる地であり、また時代を重ねるごとに様々な文化の影響も受けてきた。
そして現代、今再びこのような大きな内乱によって、歴史ある街が廃墟と化すとは誰が思ったであろうか…。
トルコからシリアへ
僕は、トルコからバスでシリアに入国して、まず驚いた…!
国境を渡った瞬間から、女性はみな真っ黒の目だけしか空いていない衣装を着ているのだ。
TVなどでこういった衣装があるのはもちろん知ってはいたが、初めて見るそれに少なからずカルチャーショックを受けたのだった。
ここに来るまでにトルコやいくつかイスラムの国々は通ってはきたが、ここまで厳格なイスラムの地は僕にとって初めての事だったのだ。
アレッポ
トルコからシリアに入って最初にある大きな街がアレッポだ。
街に入ると、アジアでよくあるような香辛料独特の香りが鼻をつく。
市場に入れば石鹸が山積みされる。
そう、ここは有名な「アレッポ石鹸」の産地でもあった!
街を歩くと、子供達からは奇異の目を向けられる。
アジア人は珍しいのだ。
ブルースリーやジャッキーチェンの物真似をされるw
彼らからしたら、中国人も日本人も同じだろう😆
みんな働き者だ。
確かにお世辞にも裕福な国ではないかもしれない。
子供もだって働いている。
みんな真面目で働き者の国。
そんな印象を最初受けたのだった。
要塞クラック・デ・シュバリエ
アレッポを出ると首都のダマスカスへと向かった。
途中ホムスという街で、有名な観光地となっているお城へと寄ってみた。
写真:wikipedia commons
ここはクラック・デ・シュバリエ(Krak des Chevaliers)といい、およそ1000年前の十字軍時代の要塞とのこと。
当時の技術の粋を集め、世界一美しい城とも当時は讃えられたそうだ。
その後地震により一部が倒壊したが修復が加えられ、現在ではユネスコ文化遺産となっている。
この美しい回廊は、社会科の教科書だろうかどこかで見た事があった。
シリアの空には穏やかで、気持ちのいい空気が流れていた。
ダマスカス
初めての中東は、予想とは裏腹に居心地の良い場所だった。
なかなか日本にいると悪いニュースばかりが目に飛びつき、行く前から先入観ができてしまい敬遠しがちだ…。
しかし、落ち着いた文化に国民性。礼儀も正しく、きっとこれは敬虔な宗教国であることからも来ているのだろうか。
そしてこのアラブ特有の文化も嫌いじゃなかった。
モスクから日に五回流れてくる大音量のアザーン。お祈りの時間を告げるものだ。
他の旅人はうるさいと言う人もいるが、僕は妙に心地よく感じた^^
また食堂から漂ってくる美味しそうな匂い。本場のケバブやプレート料理。またスープにサラダに揚げものや見慣れぬ凝ったもの。
美味しい食文化がここにもあるのだ!😋
ひよこ豆を使ったファラフェルという料理は最近日本でも有名だ。その揚げたての味は最高だ❗️
チャイ(紅茶)は至る所で飲まれ、街歩きしていると、よく「チャイを飲んでけっ!」っておじさん達から招待される。
みんな人懐っこく和気あいあいとしている。
一度ダマスカスの路線バスの中で日本語で話しかけられた。
「日本人ですか?」って。
えっ!?
びっくりした!
その彼はここ現地の若者で、大学で日本語を学んでいるという。ちょうどテキストを持っていて勉強中の日本文を見せてくれた。
そして日本語の難しい文法に苦労していた…^^;
日本のアニメや文化が大好きで、将来日本で働きたいと言っていた彼。
こんなところにも日本を好いてくれている人がいるんだなぁ、と驚いた。
(現在の内戦。今、その彼はいったいどうなってしまったのだろうか…)
ゆったりと流れる時間の中にも人々のエネルギーを感じられ、街の喧騒の中にいてまさに「今、旅してる!」という感覚を強く与えてくれた。
中東のシリアは、予想以上に僕の心の深くに残る気持ちの良い場所であった。
シリア内戦ー深刻な泥沼の状況ー
まもなく9年目となる現在のシリア内戦の状況は、様々な思惑、勢力が非常に複雑に絡まってしまっている。
最初は、民主主義を求める運動「アラブの春」から始まった反政府デモだった。それが内戦へと激化していってしまったのだ。
政府軍側にはロシアが。さらにイランや中国までもが支援をする始末。北朝鮮に限ってはシリアとは古くからの友好国で、生物兵器などの輸出の疑いもある。
一方の反政府側にはアメリカとイスラエル。さらに民主主義を進めたいヨーロッパ。
またイスラム過激派組織やアルカイダ系テロ組織も戦いに加わり、さらに周辺国のイスラム教国も加わると、今度はシーア派とスンニ派の対立にもなっていってしまいややこしい事に。
さらに少数民族問題でトルコなどで迫害されているクルド人、彼らも戦後の自らの立場をより良いものにするためにも参戦した。
しかし問題は、こういった反政府組織がいくつも乱立し、それぞれがまとまっていない。
仮にもし政権を交代できたとしても、新しく人々を統率できる実質的なリーダーがいないのだ。
そして追い打ちをかけるのがご存知、IS(イスラム国)の台等。壊滅はされたがテロの脅威は深刻だ。
状況は当初とは比べものにならないほど複雑になり、シリアは、本当に内戦をしているのか?とさえ言われる始末…。
参考:https://diamond.jp/category/zt-arab
平和のために
シリアに本当の意味で再び平和が訪れる日は来るのだろうか?
もしかしたら欧米の押しつけの「民主主義」にも問題があるのかもしれない。
ここでもまた大国による代理戦争が行われている。
裏で手を引く利権と己の都合のみを考えている政治家達。
いつの世も、権力者によって机の地図上だけで勝手に物事が決められそこに住む人々のことは全く考えられもしない。
そんな一部の人間達によって世界は決まっていく。多くの犠牲を伴いながら…。
そしてそれを変えられない、僕ら一人一人も問題だ。
そう、僕たち地球人はまだまだ未熟だ。
世界の平和のために今、何ができるだろうか?
何かが手遅れになってしまう、その前に。