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ガーナに戻った僕たちは最後の時間を過ごしていた。
ここは居心地がいい、いつまでもいたい。
そう思う反面、しかし次なる目標がないのにこのまま居続ける事はまだ出来ない。
次の目的地はヨーロッパだ!そこでここで今まで学んだ事を活かすんだ!
それが僕らの次なる旅の目標だった。
目次
過ぎ去りゆく時間
その後、僕たちは車を売った。
僕たちを乗せ、たくさん色々な場所へと連れて行ってくれたこの車にはすでに大きな愛着が湧いていた。
漫画ワンピースが好きな僕らには、いわば「船」であった。
僕らは買った時から付いていた「GT9100W」のナンバープレート文字が気に入って、GT号と呼んでいた。
そして無事に次の買い手が見つかると、6500米ドルの値段で買い取ってくれた。
僕らは9500米ドルで買ったので、割と良かったと思う。^^
マフラーの事は最後まで言えなかったが。
落ちませんようにと祈ったのだった。
そしてそのお金でヨーロッパへのフライトチケットを買った。
まさえも日本への帰国チケットを買うと、いよいよこの地を発つんだという実感が湧いて来た。
まさえ
まさえは不思議な人だった。
彼女は英語がほぼ喋れなかった。
しかもかなりか弱い女の子だ。
しかしたった一人でこんな所、アフリカの僻地にまでやってきてすごい胆っ玉である。
そんな彼女にはすごい能力があった。
それは、彼女はどこででも友達を作れる事だ。
作れるというよりかは、人を引き込むと言った方がいいのかもしれない。
みなが彼女を助けたくなってしまうのだ。
そして彼女自身も恐れなかった。
知らない人といるのも、何かに誘われるのも。
彼女には、言葉を必要としないでコミュニケーションを取る不思議な力があった。
一度彼女と心を通じあわせれば、男性でも女性でもみんなまさえの事を好きになり、助けたり、力を貸したりそうせざるにはいられなくなる。
なんて力だ!
彼女はよくボクと雄生が練習している時、一人で街に出て行って散策したりしていた。
そして気が付くとどこかの誰かのところでご飯を食べていたり色々とお世話になっていたりする事がよくあった。本人曰く、誘われるらしい。
僕らとはまた違った魅力を持ち、人と人とを繋げる。
それは本人が自覚している、していないに関わらず。
いずれにせよまさえがいてくれて、僕らの旅はより深みを持って楽しめたのであった。
望(のぞみ)
望とボクは旅の初期のインドで出逢い、御縁からずっと繋がりを保ち続け、そして今回のアフリカ旅に合流してくれた。
彼女がいたからこそ旅の楽しみが増したし、深みに行けたし、目標が持てた。まさえを繋げてくれたのも彼女だ。
足の怪我など、ボクと境遇が似ているところもあった。しかし逆境に負けず、常に難しいことにチャレンジをし人生を楽しんでいた。
彼女もまた世界を一人で旅していて、女性である事の大変さや恐怖心をいつも超え、果敢に冒険し、その自由と広い心でこの世界で羽ばたいていた。
そんな彼女は、僕の憧れでもあった。
また、料理をしてくれたり、食べ物や美味しいお菓子を見つけてきてくれたりして、たくさんの楽しみと喜びを与えてくれた。
悩んだり、相談したり、ボク自身が前に進むための大きな一歩を与えてくれたのも彼女だ。
とても大切な存在でもあり、ボクにとっては人生のキーパーソンである。
雄生(ゆうき)
このアフリカの旅はまさに彼との出逢いから始まったのであった。
イタリアを出た後のヨーロッパ旅ですぐに出逢い、意気投合しアフリカへと一緒に行くことになった相方。
僕らの最初の出逢いは、北イタリアの港町で彼が野宿していた事に端を発す。
彼はヒッチハイク、野宿、大道芸でヨーロッパを周っていた。
その後、一緒に旅する中でジャグリングやバルーンを教えてもらい、頑固で意固地なボクにも面倒見良くずっと付き合ってくれた。
この旅を通して見てきたものは、全て彼の人との接し方だったり、生き方そのものだった。
どこでもすぐに人に囲まれ人気者の彼。
見た目ではなく、飾る事なく、真に「かっこいいとは何か」それを示してくれたのも彼だった。
彼なしに、今の自分は存在しない。そう言い切れる出逢い、そして冒険だった。
ガーナの仲間たち
一番仲が良く、一緒に色々な観光地へと行ってパフォーマンスを共にしたMr.ファンタスティックことフィンは、彼もカナダへと行くことが決まったのだった。
彼は凄まじいポテンシャルを秘めたアーティストで、その可能性を見出されアーティストビザが降りたのだ。これは稀である。
そしてその行き先がバンクーバーだった。奇しくもそれは同じくカナダ移民である雄生の実家がある所だった。
また、ジェンベを繋いでくれたマスターのコフィー。
一番最初に僕らを迎え入れてくれたムスタファ。
コクロビテビーチの稀代のアーティスト、パトリック。
同じくそこで生きる苦しい環境の中でも強く生きて来たジョシュア。
そしていつも笑顔で迎え入れてくれたステラとガブリエル。
首都アクラの海沿いでゲストハウスを営み、多くの人から尊敬を集めるパパジャー。
そしてケープコーストで僕らに一番親しくしてくれたストーン。
宿オアシスのオーナーのアリとその元で働くスタッフ達。
出逢いの御縁と人との繋がりは、心の底からの熱い感情をこみ上げさせ、今生きていのだという確かなる喜びを溢れ出させてくれるのであった。
そして繋がりゆく未来へ
僕と雄生は最後に大げんかをした。
それはこの先の進路を巡って。パフォーマンスの道を考えて。
雄生はパフォーマーになりたくてアフリカ旅でも積極的になんでもチャレンジして場数を踏んできた。
彼は目標がクリアだった。
それに対して僕は、流れからパフォーマンスをするようになり、それを将来的に仕事にしようなどとはこれっぽっちも考えていなかった。
ただ、今これに挑戦し、恐怖などから逃げ出さない精神を鍛える為に必要だったのだ。
確かに、この期間の出逢いや流れの御縁は何よりも深く、僕はジャグリングが自分の中心にあるように感じるまでになっていた。
しかし、それを今後もどこまでもやって行こうとは思わなかったし、自分にそんな事ができるのかという大それた恐怖感の方が大きかった。
しかし雄生はそんな弱気なボクに対して叱責した。
『ここまで来たのにそんな事言うのか!
俺を超えたければいつでも超えられるのに!!』
ボクも必死になって反論した。
『そもそも自分がやりたかった事は違う!
こんな事ではない!もっと違うんだ…!』
半分涙目になりながら、ボクはあらゆる弁明を試みた。
しかし、その反面、自分が言い訳をしているという事にも気付いていた。
それは、ボクがこのアフリカの旅を通して学んできた事だったのだから。
「言い訳をしていても見つからない。
今目の前にあるもの、今自分の手に持っているもの。
それを大事にしよう。」
そして、’’絶対に諦めない事’’
それだった。
どうやらボクの進む道はもう決まっているようだ。
ここで得たものは大きい。
今、アフリカで見つけたものを磨き上げないでどうする?
自分の道はもうわかっていたのだ。
そして、その険しさも。
アフリカの旅は、僕らにとってかけがえのないものであった。
それは一人の青年を大きく変えるには十分すぎるほどのものであった。
僕らは忘れない、ここで起きた事を。この地に生きる多くの友人たちの事を。
動画◉–アフリカ旅のハイライト–
アフリカ編・完結
<訪れた国>
モロッコ・モーリタニア・セネガル・マリ・ブルキナファソ・コートジボワール・ガーナ・トーゴ・ベナン・ナイジェリア
<期間>
2007年11月〜2008年4月