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ガーナでの滞在は3ヶ月に及んだ。
ここまで長期で滞在しようとは思っていなかったが、それを余儀なくされていた。
その理由は、車の名義変更の為だった。
車を買い、そこに付いていたナンバープレートは前オーナーの物だった。僕らはそのまますぐに乗れたが、名義変更をするのに時間がかかった。
このままでは国境を越える時に問題が起こる。
僕らは何度か首都アクラの陸運局まで足を運び、書類を出して待った。
そうして全ての手続きが終わるのに、結局3ヶ月程の月日が必要だったのだった。
しかし、そのお陰で僕らはガーナ国内を車で色々と周りパフォーマンスをし、出逢った友人らと関係を深く築けたりしたのだが。
しかし、それも終わり、僕らにはいよいよ出発の時がやって来た。
出逢った友人や仲間、お世話になった人達へと挨拶をした。
とても寂しかったが、しかし前に進まなくてはならない。
この地で起きたこと、それはひとえには語れなかった。
ボクはパフォーマンスを始め、自分自身を変える大きなきっかけを掴んでいたのだったのだから。
これを誰が予想したろう?
目次
トーゴとベナン
ガーナを出ると、その右側には、トーゴとベナン(ベニン)という小さな国が二つあった。
ここは再びフランス語となった。
その文化も、国境一本隔てただけでここまで変わるのかという衝撃を再び受けることとなった。
そしてガーナがどれだけ裕福な国だったのかということも改めて実感させられた。
道路は穴ぼこが目立つようになり、車の運転に慎重になる。
ガソリンスタンドのブランドや、道路標識の表示の仕方、売っているパンから食事までもが変わる。
街にあった活気も変わり、ガーナほどの賑わいはなくなった。
小国のため人口も経済も、そして国民性までもが変わる。
ガーナのようなフレンドリーさがなくなったと感じる。
国境一本の線なのだが、それによって統治が変わる。治める者が変われば、その下に生きる者の生活、様式、態度その全てが変わる。
それが人間の社会。
それを深く実感したのだった。
トーゴの首都ロメ
僕らはとりあえず首都のロメに着き一泊した。
閑散とした街だった。
治安は悪くなさそうだが、物静かな街だ。
ホテルには大きな中庭が付いていて、僕らはそこでジャグリングをして遊んだ。
現地の人らが数名そこにいて、僕らの事を遠目から見ていた。
僕らはいつもの友達がいないことに寂しさを覚えた。
小さな国なので、僕らは次の日にはこの国を出て、隣国へと向かった。
ベナン
ベナンも小さな国だ。
しかし、このまますぐにこの国を抜けてしまうのも残念なので僕らは海を見に行こうと思い、国道からそれて海を目指して脇道を進んだ。
すると、道の両脇には、物珍しい奇怪な像が置かれていた。
これは、ベナンを中心とする地域で発祥しアメリカ大陸の黒人たちの間で信仰されているという「ヴードュー教」のものだった。
それは教義や経典がなく、民間信仰のようなものだ。この世のあらゆる物に魂が宿り、その精霊を崇める。
どこか神道を思わせる自然崇拝的な感じだろうか。
しかし、黒魔術的な儀式も行い、太鼓を使い歌と踊りから入り、動物による生贄や、神を憑依させる呪術なども行うらしい。
奴隷貿易で連れて行かれた黒人達がアメリカで広め、弾圧されながらも現在ではキリスト教と融合し世界中に信者がいるとある。
ここら辺一帯はその有名な場所なのだろうか?
僕らはそんな像をいくつか通り越した。
そうして進んで行くと、海へと出た。
ここまで来ると大自然の中といった感じだ。
落ち着いたのどかな空気だけが流れていた。
海の周りには何もない。圧倒的な大自然。
目の前には大西洋だけが広がっていた。
遮るものが何もなく、ただ波が押し寄せては引いていく。
地球の鼓動を感じ、ここは大昔より原始のそのままの状態ではないだろうかと思わせた。
僕らはここでジャグリングをする事にした。
ここでしたら気持ち良さそうだ!
ジャグリングはいつでもどこでも出来る。それはすでに僕らの生活の一部となっていた!
すると、どうだろう。
先ほどまで人の姿は見えなかったのに、僕らの姿を見つけてちらほらと人が集まってきた。
どうやら近くに住む住人達らしい。
みんな集まってくるが、一定の距離を置いて見てくる。
恥ずかしさ、そして礼儀みたいなものも感じた。
それでも好奇心を抑える事なく、ただじっーと見てくる。
みんな目が合うと恥ずかしそうにはにかんでくる。
そんな訳で、僕らも目や顔や表情でコミュニケーションをとってみる。
そうして、近づいて行ってみると、「きゃー!」って逃げられた!
けれど少しづつだんだんと距離が近づいてきて、そうして小さな子供とか自然と鬼ごっこが始まったりする(笑)
近くには牛の群もやってきた。
ここがいつまでも平和で平穏が守られ続けますようにと願い、僕らはここを後にしたのだった。
そしてナイジェリアへ
その後、僕らはベナンの首都へと向かった。そこで次の国であるナイジェリアの大使館へと行き、ビザを申請した。
いよいよナイジェリアである。
この国は悪名高い。その噂は節々から、またガイドブックに至るまであまりいいことは書いていない。
政治の悪さから、人口過密、失業率と犯罪率、そして宗教対立とテロ。アフリカ人でもナイジェリアは恐れると。
しかしここを通らなくては次へと行けない。
ここまでの平和な日々は、嵐の前の静けさといったところか…。
僕らは再び身を引き締める思いであった。