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僕はこの先どうしようかと、街の広場にある教会の前に座り込んで考え込んでいた。
季節はまもなく本格的な冬を迎える。
時折冷たく吹く風が身に沁みる。
焦りはあった。しかし正直なところ僕の心の中は一つの感情が大きく沸き起こっていた。
それはワクワクだった。
お金が無くなる。
実はこの事を僕は心のどこかで待ち望んでいたのかもしれない。
目次
旅とは何か?
旅とは何かと考える。
実際のところ、今までアジアを横断する旅を続けてきて、秘境や辺境のような地域にも行ってきた。
旅出る前は恐怖心こそあったが、いざ実際に行ってみるとそこまで難しい事はないのである。
それは、なぜか?
それは、お金があるからだ。
そう、お金があればどこにでも難なく行けるし、全くの知らない場所でも食事にありつけるし、縁も所縁もないところでも温かいベットで眠ることができる。
お金があれば飢える事もないし、困る事もない。
お金があればまず死ぬ事はないのである。
(もちろん、事故や事件に巻き込まれるというのは別として)
日本にいれば当たり前すぎて意識しなかった事だが、こうして異国の地に身を置くと、いかにお金というものの便利性、そしてその逆にお金のある事による希薄性をも知った。
僕はこれまで一年間旅してきて、この旅を次のステップへと持っていきたかった。
勘違いしてもらわない為に書くが、僕はお金を悪いものと見なしている訳ではない。
ただ、若い自分にとって、お金でなんでも解決できてしまう事に違和感を持ったのだ。
これが後々のヒッチハイク旅へと繋がって行くのだが。
そして、この旅自体が親の援助によって成り立っていた事も、そこを考える大きな要因だったかもしれない。
旅という名の「人生大学」
そもそも、僕には夢というものがなかった。
高校卒業後もふらふらとしていて何をしていいのか分からずに、中途半端な若者そのものであった。
家庭は一般的で特段貧しくはなく必要なものは手に入った。それらは当然父親と母親がしっかりと働いていてくれたからだが。
そんな折、父親が僕の将来を心配して、「大学に行きたければ行ってもいいぞ」そう言ってくれた。
しかし将来何がしたいのかも分からないし、実はその前に一度専門学校に行かせてもらっているが中退してしまっている。
確固たる目標もないのに大学へ行ってもまた親に迷惑をかけてしまうだけだ。
父親は「最後のチャンスだ」とだけ付け加えて言ってくれた。
僕がそこで出した答えは、学校という場で学ぶのではなく、世界を旅してそこで人間や地球や文化や心を学んで来たい、そう思った。
そこには、自分の中でも日に日に大きくなる’’世界を見たい’’という想いや、そこに懸ける確固たる信念や情熱があった。
その想いのありのままを父親へぶつけた。そして大学の分のお金を旅に充ててもらえないかと。
父はしばらく黙りこくって考えた後にこう言った。
「それもいいかも知れないな…」
今思えば、10代の時に塞ぎ込んでいた自分に手を焼いていた父親の最後の手段だったのかもしれない。
海外に出るのはいいことだろう、と。
こうして、世界をフィールドにした学び場、「人生大学」が始まったのであった
旅人一年生
旅出る前の夜は、あれだけ意気んでいても怖いものであった。
それは恐怖でしかなく、もしやこのまま日本にいて安全に暮らしていた方がよかったのではないか?
僕はとんでもない選択をしてしまったのではないか?
恐怖と後悔に苛まされ、ほとんど眠れなかった。
しかし、勇気を振り絞って飛び出した世界はやっぱり面白く、様々な出逢いと冒険が僕を待ち受けていて日々成長する実感が得られた。
そうして進んで行き、一年があっという間に過ぎ去った。アジアを陸路で横断するという偉業もなし得たのであった。
そこで自信を得た僕が、次なるステップへと行く為に意識したのが上記したお金であった。
ローマ滞在記、働く!
そういう訳で、父親から旅の資金を貰っていた。
もちろん、節約しながら使っていたし、困れば次の仕送りを早めてもらうことも出来たであろう。
だけど、無くなったからと言って、すぐに甘えるのは格好悪いしその前に自分でどうにかしたい。
僕はこの状況から出来ることを一つ思いついた。
「そうだ、ここに住んで働こう!」
きっと何か仕事は見つかるはずだ。例えば日本食は人気で寿司レストランなどはヨーロッパを巡る中で何軒もあった。
そんな場所で住み込みで働けたら、ドラマや映画みたいで面白いな!
イメージは魔女の宅急便でキキがパン屋さんで住み込みで働かしてもらうシーンだった。
人生そう簡単に行くだろうか?
しかしやってみないと分からない。
僕はそう思うと楽しくなってきた。
このワクワクがあれば大丈夫!
よ〜し行くぞ!旅人二年生目。次のステップへと進もう!
【イタリアとの出合い3へ続く】