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その日の午後、ボクは無事にベルリンの地へと降り立った。
あれから2台乗り継ぎ、ベルリン市内の駅で降ろしてもらったのだった。
ここからは電車でベルリンの中心地である「アレクサンダープラッツ」という広場を目指すことにした。
目次
ハッケンシャーマーケットのアーティスト達
アレクサンダープラッツには、大きなベルリンタワーがあった。
日本でもTVなどで見たことがあった、特徴的な形のベルリンのタワーだ。
その前の広場には若者や観光客で賑わっている。
ボクは近くにいたタクシーの運転手に『ストリートパフォーマーはどこにいる?』と尋ねた。
すると、一駅隣の「Hackescher Markt」(ハッケンシャーマーケット)に行くといいという情報を得た。
マクラメアーティスト
線路沿いを伝って隣駅まで歩いた。
するとそこにはレンガ造りの特徴的な駅があり、小ぢんまりとしているが駅前にはカフェなどが並びおしゃれな一角があった。
そしてそこでボクが見つけたものは、路上でアクセサリーを売るアーティスト達だった。
マクラメと呼ばれる紐を編み込んで作るアクセサリーで、さまざまな石やビーズなどを織り混ぜてとてもかっこよく綺麗だった。
彼らはいろいろな所から来ていた。メキシコや、ペルー、エクアドルの人たち。南米の人が多かったかもしれない。
ボクはそこで一人のドイツ人女性、カティアと出逢った。
彼女は、銅や針金を折り曲げてイヤリングや、指輪、ネックレスのトップを作っていた。
複雑で見事なデザイン!
今までの旅でもこういった人たちと出逢ってきたかもしれない。
けれど今まではボクの視点はそこになく、交わることはなかった。
しかし今こうしてストリートに立ち同じ目線で社会を見ると、実に面白い人たちはいっぱいいることに気が付いた。
ここで出店するのに許可は必要なく誰でもやれるとのことなので、ボクもアフリカで買って持っていたアクセサリーを広げて売ってみることにした。
ヨーロッパに戻ったら売ってみようと、アフリカにいる時にいろいろと買っていたのだった。
自分の道、試せるものはなんでも試してみたかった。
初めての友達カティア
その日の夕方、日も暮れてきてみんな商品を片付け始めていた。
ボクはこの後どうしようか。
そう考えていると、カティアが「行く当てがなければうちに来る?」と、誘ってくれた。
それは嬉しい!
ボクは笑顔で「Yes!」と答えた。
カティアの家は、そこからそう遠くない場所にあった。
ベルリンの風景を作り出す、大きなアパート楝たち。その一角、そこの最上階に彼女は住んでいた。
歴史がある建物とすぐに感じられるそれは、大きな扉、高い天井、大理石の床、エレベーターのない階段…。
5階が最上階と言えど、日本の感覚からしたら、8、9階くらいには相当しそうだ。
彼女はそこに他に二人のルームメイトと一緒に住んでいた。
二人とも女性らしい。一人は旅行に行っているらしく、今はいないようだ。
ボクはもう一人のルームメイト、ウィリアムを紹介してもらった。
可愛らしい女の子で、大学生だそうだ。
ここは女性の家だが、ボクは招待してもらえ嬉しかった。
男性だからダメ、と一律して言うよりも人間性を見てしっかりと判断する。ドイツ人の自立性の高さを見た気がした。
水とカティア
彼女は大学院に通い「環境」について研究をしていた。
彼女は会話の中で常々「水」の大切さについて力強く語っていた。
『水は大切だ、しっかりと守っていかなければならない。』
最近では、ネパールの水質保護のプロジェクトに参加していてネパールから戻ったばかりとのことだった。
いづれはドイツの自然豊かな地域に暮らし、環境と水を保護しながら生活したいと言っていた。
歳の頃はボクとほとんど変わらない彼女。しかししっかりとした自分の考えと地球環境への想い。そしてそれをしっかりと相手へと伝えれる意志の強さ。
ボクは彼女を尊敬せざるにはいられなかった。
数ヶ月前に丸坊主にしたという彼女の頭は今ではすこし髪の毛が伸びてきていた。
以前の私、と見せてくれた写真には肩よりも長く伸びたロングヘアー姿の彼女が写っていた。
不思議な落ち着きと優しい口調、澄んだ青い瞳、坊主頭。
広い部屋の中にはほとんど荷物はなかった。
彼女のまとった穏やかなオーラ、そしてとてもスピリチュアルで精神性の高さを感じた。
ボクはここでまた一つ素敵な出逢いをしたのだった。
ボクはその後しばらくここを拠点にさせてもらい、ベルリン滞在をするのだった。