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試練!60時間のバス旅…、古都バマコを目指して三千里!

長い道のりへ

セネガルのダカールを出ると、僕らは隣国マリの首都バマコを目指した。

西アフリカの地域は、その昔マリ王国という巨大な国があり、現在のセネガル・マリ・ブルキナファソ・コートジボアール・ギニアなど一帯に広がっていた。

欧米や日本でも有名なジェンベという太鼓の原産国であり、またバラフォンやコラといった楽器もこの王国で演奏されていたものである。

また、マリ王国の全盛期には金や塩の貿易で繁栄を極めたとある。12世紀~16世紀の事である。

マリを中心とした王国で使われていた様々な楽器。真ん中のはギニアの神様ニンバ。

古都バマコを目指して

ダカールからはバスが出ていた。

バスはアフリカにしては綺麗だと思うが、しかしかなりレトロである。(つまり古い..)

乗客は意外と多く、出発間際にやってきた僕ら3人には通路の補助シートが割り当てられた。

左右には、みんな現地のアフリカ人ばかりが乗っていた。

男ばかりだ。

外出するのは男性、というイスラム教社会のせいだろうか。そう、ここ西アフリカ一帯は敬虔なイスラム教社会だった。

 

バスは出発すると、しばらくは舗装された綺麗な道を走った。

しかし、出発して30分も経つと、バスは路肩に止まった。

ドライバーがボンネットを開けて、何やら修理している。

どうやら故障したようだ。

早いな(笑)

 

発展途上国ではよくある事だが、しかしさすがに早すぎだろうと思わざるをえなかった。

乗客達は文句一つ言わないが、直すドライバーを囲み野次馬する。見られる方は結構なプレッシャーではないだろうか?

 

しばらくすると無事に直ったらしい。良かった!

僕らは気を取り直して再び出発した!

束の間、順調に走るもまた30分程してバスは路肩に止まってしまった…。

またか、でも仕方ないか…。

 

ドライバーが降り、再びボンネットを開けて修理が始まる。

乗客達も降りてまたそれを野次馬する…。

そして少しして無事直ったようだ。再び走り出す。

 

よかった、よかった!

結局何が原因だったのだろう?

しかし、ドライバーもよくバスなんかを直せるモンだ!

そう感心していたのだが、また束の間、落ち着いてきた頃にバスはまた止まってしまうのだった。

 

そしてドライバーが直しに行き、乗客もまた無意味に野次馬するというループが繰り返されるのだった。

なんなんだこれは…。笑うしかない。(笑)

乗客達は文句ひとつ言わないが、きっと不安とストレスなのだろう。みんなソワソワしていた。

 

しかしドライバーの落ち着き切った顔。やはりこんな事は慣れっこなのだろうか?

ここのドライバーにはメカニックの知識もないと務まらないだろう。

就職試験でそんな課題とかあるのだろうか?

 

そんなことを考えつつ、「今、僕らがいるのはアフリカ」良くも悪くもそう思うしかなかった。

ただこの先が思いやられる。それだけは確かだったが…^^;

 

また、バスは別の目的でも止まった。

それは、日に5回あるというイスラム教のお祈りの為だった。

どうせなら修理している時にやって欲しいものだが、時間が決まっているのだろうか、時間になるとバスは順調に走っていても止まった。

僕らはその度に待たされる事を余儀なくされたのだった。

バマコへはいったいつ着くのだろう?

およそ1000kmの道のり。

僕らはざっくり、およそ2日かかるとだけは聞かされていたのだった

過酷なバス旅。永遠と続く道

夕方になってくると、バスはほとんど故障しなくなった。

さっきまでのは一体なんだったんだろう?

しかし、それはすごく有り難かった。やはりいちいち止まのはストレスだ。

少しでも早く前に進みたいと思うのは人間の本能的欲求だろうか。

 

また他にバスの中は暑く、狭く、むさ苦しい。

これは忍耐でしかなかった。

隣の乗客とも会話することもなく、周囲もお互いがお互いを我慢しているような状況であった。

精神的に追い詰められてくると、無意味に相手にイライラしたりしてしまう。そこには相手を理解しようとか譲り合おうといった精神は無くなってくる。

 

しかしある時、国立公園の脇を通った時だった。

みんなバスの片側の窓に集まった。

『おい、あれ見ろよ!動物がいるぞ!』という感じで誰かが言い、みんなわいわいキャーキャー騒ぎ始めたのだ。

重かった空気は一変し明るくなった。

確かに何かの動物がいるようだった。

しかしそれよりも、僕はなんと彼らはアフリカ人なのに動物を見たことがないという事に驚きだった!!

確かに今まで通ってきた国々に動物はいなかった。

なんて事だ!(笑)

アフリカ人は動物と共存している、というのは僕の勝手なステレオタイプのイメージだったようだ。

まるで子供が初めて動物園に行って動物を見るように彼らは興奮し顔をほころばせ喜んでいた。

そんな些細な事だが、僕は彼らに親近感や愛着が湧いたのだった。

彼らも同じ人間なのだ。そのことを再認識したのであった。

食事の時間

しかしいったいバマコにはいつ着くのだろうか?

前半の故障で時間をだいぶロスした。

2日で着くと言うのは、解釈の仕方によっては明日ではなく、明後日に着いてもおかしくない。

しかし余計なことは考えないほうがいい。これは瞑想に近いかもしれない。

僕らは未だ見えない希望の光に対して、余計なエネルギーを使わないように最小限のエネルギーでバスの中でうずくまっているだけであった。

 

そんな中、バスはたまにどこかの集落に止まり、休憩をした。そこにある食堂ではご飯を食べれた。

しかし僕は衛生的に汚く感じあまり食欲が湧かなかったが、雄生は気にせずに旨い旨いと言って食べていた。

彼こそまさにどこででも生きていける人間であろう。

休憩中。とりあえず食べ物を探してみる。

豆料理はこちらでよく食べられている。

アフリカンキッチン。七輪のような器具で調理する。火加減が難しそうだ。

名もわからない辺鄙な村へと

夜になるとバスはどこかの村へと止まり、ドライバーは乗客に明日何時出発だと告げると一方的に降ろされた。

乗客達は蜘蛛の子のように散り散り消えていった。

どうやら今夜はここで各々泊まるらしい。僕らも宿を探した。

 

街とも村とも言えないよくわからない場所。

すごく閑散としている。夜なので一層寂しさも感じた。

僕らは宿を探すと、その後何か食べ物を求めて外へと出かけた。

 

すると宿の近くに小さな小屋があり、子供達が集まっているのを見つけた。

そこでは懐かしのゲーム機プレイステーションが置かれていて、テレビ画面にみんな夢中になって観入っていた。

僕と雄生も目を輝かせた。

そこでやっていたゲーム、それはずばりウィニングイレブンだった。

これは日本が誇るサッカーゲームで世界中で人気のあるゲームだ!

一回やるのに少額のお金のやり取りもしていた。

どうやらここはゲームセンターらしい!(笑)

 

僕らは興味津々に外から見ていると、中でやっていた中学生くらいの子供達からやるかと言われコントローラーを渡された。

ならば!と僕と雄生は、前へと躍り出た!

突如として現れた異邦人の登場に子供らの目は驚きと輝きに溢れた。

さらに日本人というのを自己紹介すると、彼らから憧れと尊敬の念さえも感じた。

そう、僕らはゲームの聖地・日本から来た使者なのだった!

彼らにしてみれば夢のまた夢のような場所から来ているといっても過言ではないかもしれない。

僕らは大きな責任さえも感じた。彼らの夢を壊してはいけない。ここでお粗末なプレイをして彼らをがっかりさせるような事があっては絶対にならないのだ。(笑)

 

しかし実際のところ、僕は野球少年だったので、ゲームもあまりサッカーはしてこなかった。それでも人気のあるこのゲームは一時期ハマってやっていた事はあるが…。

一方、雄生はカナダ育ちだがゲームもよくやっていたようだ。このゲームもまぁ得意そうだった。

しかし何よりも長時間のバス旅で疲れていたところ、ゲームで遊べるのは嬉しかった。また子供達に囲まれて、ヒーローさながらに囃し立てられるのは悪い気分ではなかった。

僕らはワクワクを隠せないでいた。

 

『やるぞ~!!』

 

いざっ!キックオフがなされた!

久しぶりにやるこのゲームは、ボタンの配置などを少し忘れていたが、しばらくやっていくうちにすぐに思い出した。

雄生は言うだけあって強かった。何度か点を取られた。

しかし僕も負けてはいなかった。

お互い点が入るたびに、周りの子達から歓声が上がった!

上手くないと出来ないパスやボールさばき、ドリブル、シュートの仕方、仲間との連携プレイ。

それらを見る度に彼らは「おー!」となり、また歓声をあげた。

 

『どうだ、見たか!これが本場のテクニックだ!』

 

子供達も身を乗り出してテレビ画面を見つめ、小屋の中はさながらワールドカップ並みの熱気に包まれたのだった!!(笑)

 

その勝負は雄生が勝った。

そしてその後何度かプレイさせてもらった。僕と雄生は勝ったり負けたりだった、総合的に雄生の勝ちだった。

彼にゲームでも負けて悔しかった。

しかし、

たくさん笑った、

たくさん叫んだ、

たくさん悔しがった、

そして、とっても楽しかった!!

 

子供達とはゲーム以外何も喋ってないが、みんなクリクリの目と屈託のない笑顔でずっと僕らと接してきてくれたのだった。

最後にまた空手やブルースリーの真似をして遊んだ。(笑)

名前もわからない、言葉も通じない、どこにあるのかも分からないアフリカ大陸旅の途中の辺鄙な村での出逢いだった。

まさに一期一会だった。

彼らは僕らの事をまだ覚えていてくれているだろうか?

まだまだ続くバス旅!

昨夜の事で少し元気を取り戻した僕は、今日も再びバスに乗り込んだ。

2日目ともなるとだいぶ慣れてきたのか、また席の近くのアフリカ人達とも顔馴染みになって来て気を使わなくなって来たのもあった。

みんな大変だ。

みんな辛い。

同じ目的地を目指していざ進んでいこう!

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